冷たい太陽






 ――神サマなんて、何処にもいない……――



 灰色の空の下、僕は太陽を覆う雲を見上げていた。
 雨の雫が降り注ぐなか、静かにその音に耳を傾ける。



 ――“想い”は、いつもこんなにも無防備で……――



 「痛い」と感じるコト自体が、心が此処にあるということの証明のようだった。
 この“想い”は、きっと、この世でただひとつだけの真実。
 戸惑いばかりが、この胸を占めている。




雨音がさらっていく ざわめきは時に僕に優しく
吸い込まれそうな 灰色の空に想い重ねて
戸惑いを止めて こんな小さな真実を笑って
「痛み」を越えれば それは きっと果てしなく優しく



 君が、笑った。
 それが……、たったそれだけのコトが、どうしてこんなにも切ないのだろう。
 君の指先に軽く口付ける。
 何故、こんなにも愛しいのだろう……?
 『……相変わらず、お前の唇は冷たいな』
 そう言って、君が笑う。
 どうして、急にこんな昔のコトを思い出してしまったのだろう?
 今、傍らにいない、君のコトを考えている。……想っている。
 誰よりも強くて弱い君が、僕に笑ってみせる。
 真実は……。
 いつも小さ過ぎて見落としてしまう……。



 ――この空にある冷たい太陽のように、君の心は見えない“真実”――



 愛しいと思う気持ちは、汚れきっているかも知れない。けれど、誰よりも想いは強く、負けはしない。
 “痛み”を感じるのは、まだ、生きている証拠だ。
 心の痛みは、癒されなければ、永遠に越えることは出来ない。
 君のその涙も、痛みも……。
 総て僕のものであれと、願っている。
 幸せも、喜びも、僕とともに在ることで充たされればいい。



 ――胸の戸惑いの理由は、風にかき消されてしまう――



 残酷なまでに綺麗な夢は、いつだって突然に目醒めてしまう。
 どんな時も祈ることは、ひとつだけ。
 「ただ、君の心の中に、いつまでも消えない存在になりたい」
 それだけしか、望まない。
 けれど、それは多分叶わない願い……。



舞い上がる風は 激しく 無防備なココロ 吹き抜け
かき消す 答えを彼方へ…
素敵な夢はいつでも残酷なほどに素敵で
目覚めは冷たい太陽

舞い上がる風にのせて 無防備なココロよ届け
予感は冷たい太陽



 君の存在は、夢ではなくて。
 手を伸ばして、温かさに触れるコトが出来る。その心に、触れるコトが出来る。
 君がいるから、偽りだらけのこの世界でも、正しいこと等欲しくなかった。



 ――もしも、翼があったとしても、空を飛ぶことを望みはしない――



 この背に翼がないから、大地を歩き続けよう。
 飛べないことを嘆きはしない。
 誰よりも“愛しい”と想う気持ちを抱えて、君の許へ。
 そう、何処にもいない神様なんかに、ただ祈り続けるだけなんてコトはしない。
 自分の足で立って。
 歩き出そう。
 羽根なんか、イラナイ。
 歩けるのだから、歩き始めよう、君に向かって。
 触れる度に上がってゆく、その体温を感じられる場所へ。



キミの「真実(なか)」 ずっと生き続けてたい
キミの「真実(なか)」 消えそうな声は…



 ――傷付けられても、痛みを感じるコトが出来るのならば、君を想い続ける資格を持っていられるのだと、信じていたい……――



“冷たい太陽” song by ROUAGE
2001.01.17 up



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