鳥になんかなれない





もし、この背に翼があったとしても、
大空を飛ぶよりも、価値の在るものを、
私はこの地上に見つけたから――




 恋を、した。
 それは幼い日の初恋。
 ただ、それだけのことなのに、どうしてこんなにも世界が変わってしまうのだろうと思った。
 ずっと、探していた気がする。
 けれども、この“感情”が何なのか、私にはまだ良く分かっていなかった。


 ――そう、君に出逢うのは、それからずっと後の出来事。


 実ることはなかった恋。
 それだからこそ、永遠に輝き続ける。
 その恋がなかったら、私は誰を愛することもなかっただろう。
 そして、心の痛みを分かろうともしなかっただろう……。



鳥になれるはずなんかないと
あの娘はちゃんと知ってた
カギをかけた柵を越えたのは
青空が呼んでたから



 “鳥になれるなんて、思わない”
 でも、大空に憧れる気持ちに、嘘は、ない。
 きっと、それに似ている。



こんなにけなげに生きてきたのに
まだ神様は あの娘に言うの



 君は“初恋の人”ではないけれど、想う気持ちに変わりはない。
 いや、違う。
 初恋じゃないから、より深く愛せる。



傷つくほうがワルイ
そう たかが恋なくしただけで
こわれるほうがワルイ
NO NO, お前はもっと強いはず



 ――いくつも恋をして、愛し方を憶えていったから。
 今なら、きっと、巧く愛せる――



風と少し話したかっただけ
髪とめてたピンを抜く
だけど みんなもう終わったこと
みんなもう遠いところ



 傷付け合う恋は、したくない。
 相手を強く想えば想うほど、傷付けてしまうこともある。傷付いてしまうことがある。
 けれど、それを恐れないでいられる、強さを持っているから。



傷つくほうがワルイ
ああ 心に刺さった三日月
負けちゃうほうがワルイ
そう 恋はいつもバトルだもの
こわれるほうがワルイ
NO NO, おまえはもっとかしこいはず



 穏やかな恋も、悪くない。
 身を焦がすような恋もある。擦れ違うばかりで、不安な恋も。
 手を伸ばして、掴める恋ばかりじゃないことも、知っている。
 でも、絶対にあきらめない。弱い自分に、負けない勇気を、いつだって持っていたい。



――悲しすぎると 泣けないものよね――



 傷つけられて、傷付くほうが、きっと悪い。
 傷つけられても、負けない強さが必要だから。
 いつだって、泣きたくなるくらいの想いを抱いているのだから……。


 手を、伸ばして……。
 君に触れても、いいですか?
 その温もりを感じるだけでも、構わないから。
 君を想っていても、いいですか?
 愛して欲しいなんて、望まないから。
 傍らに在ることを、許してくれますか?
 背中合わせでもいい。君の傍にいたいから。
 私を見て欲しいなんて、望まない。
 ただ、傍に……。
 君の傍に、いさせて下さい……。
 それだけで、私の想いは報われるのだから……。



Fly!
Into the sky
Junping high 世界と二人きり
Cry
Into the sky
Say good bye 地球を抱きしめて



 ただ、恋をした。
 それだけのコト。
 なのに、どうしてこんなにも心が揺れるのだろう。



Fly!



 ――もしも今、この世界が終わりを告げても、この想いだけが残れば、いい……。



“鳥になんかなれない” song by FAIRCHILD
2000.12.24 up (2004.05.25 revision)
 



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