――私だけを、見つめて欲しい――
アイツとあの人の関係が、微妙になっていたのには、随分前から気付いていた。
でも、それを知らないふりをしていた。
――ずっと、アイツに惹かれている。
その気持ちから、目を逸らしていた。
私には恋人がいたし、アイツにもあの人がいたから。
初めて出逢った時から、アイツしか見えなくなっている自分を知っている。けれど、それを素直に受け入れられない自分も、分かっている。
そう、アイツにしてみれば私は“親友の恋人”だったからだ。
こんなに苦しい気持ちを抱いたまま、遠くからアイツを眺めていた。
天の邪鬼な私を愛してくれた人を、裏切れない。
その思いが邪魔をして、私は立ち止まったまま、踏み込めないでいた。
でも、本当は会いたい。１秒だって、会いたい。
揺れる心を縛るのは、罪悪感だと知っている。
アイツに会う時は、いつだって互いに恋人がいて――。
胸の痛みに涙が零れそうになる。
こんな気持ちを抱えたままだから、私と恋人の関係も少しずつ冷えてゆく。
いつからか、目も合わせなくなっている。
だから私は、心を決める。
切ない想いを抱えて、鬱屈とした日々を過ごすのをやめよう。
もう自分の気持ちを殺したりはしない。
偶然にふたりだけになった時、眠った振りをして、そっと肩にもたれ掛かる。
アイツと私の恋人との友情が壊れても、あの人からアイツを奪いたい。
傷付けても、傷ついても構わない。
この恋に総てを賭ける、覚悟は出来ている。
――戦うなら勝ちたい 一途さなら負けない
運命感じた恋を渡さない
Seriousな恋にルールはない
あなた以外見えない あなたしか愛せない
微妙なトライアングルここまでよ
Seriousな恋を手に入れたい
私だけを見つめて 私だけを愛して
揺れてるあなたのことを奪いたい
Seriousな恋を手に入れたい――
きっと、こんな気持ちは二度と持てない。
だから私は、アイツを追い掛けて捕まえる。
愛しているとは、言えない。
けれど、この気持ちだけは、絶対に誰にも渡せない――。
“Serious” song by 野田幹子
2000.10.06 up