今月の一冊 ――2010年4月――


簡単に言うなら、お勧め本のページ。
独断と偏見により、マイナーっぽいものが多いです、多分、きっと。
マンガから小説、絵本まで、いろいろと語らせてもらいます。


バーバーハーバー

小池田マヤ(講談社ワイドKCモーニング・全7巻)

 

 大阪・千里のとある町で、ヘアーサロンを営む馬場皆人。そこへデートへ急ぐ途中、自分の顔にヒゲを発見してしまった千里出身東京在住の会社員・鹿崎東子がやってきたことから始まる、超スローほのぼのラヴストーリー。
 伸びた鼻毛を指摘され、5分でフラレた東子さんが、顔そりの不備を指摘するために、再び『ヘアーサロン・みなと』にやって来ると、「こんな綺麗な人の鼻毛なんか切ったことが無かった」と、恥ずかしそうにしているマスターに心惹かれていき、FAXで文通を始めることに。
 ちょっとしたことで、すぐに『メルヘん』モードに入ってしまうマスターに、東子の片思いは続く……。


 三十路の男女の恋愛話のはずなのに、そこいらの中学生より進まない関係に、やきもきするかと思いきや、そんなことは全くなく、もう、このカタツムリな進展具合を楽しむようになっていました。
 ネタバレになりますが、東子さんが勢いで告白FAXを送るまで、マスターは全く東子さんの気持ちに気付いていなかったというところが、面白い。(そのFAXを女の幼なじみに発見され、「女がそこまでしてくれているのに、恥をかかせるな!」みたいに言われておつきあいを開始。勿論、遠距離恋愛。)
 その後、距離が大阪ーイギリスにまで遠くなったものの、それを機に婚約。
 最終巻はほぼ丸ごと結婚準備と結婚式の話となっています。(おまけで10年後の馬場家の小話が収録されている。)
 皆人の弟・研人と東子の恋のライバル美少女・智子の親友である幸の超特急恋愛が、ものすごく対照的で可笑しい。
 智子とマスターの幼なじみ・ホクロンの微妙な関係といい、一つの町での人間模様がじっくりと描き出されていて、ちゃんと全員年をとっていくし、子供は成長していく。結婚したり、子供が生まれたり、離婚して出戻ってきたり、いろんなことが、普通の日常の出来事として淡々と描かれている。作者は、ふたりの結婚で終わるのではなく、もっと先の人生まで考えていたそうなのだが、切りの良いところで連載は最終回を迎えたらしいです。
 『バーバーハーバーNG』という、10年後の子供たちの話もあるそうなのだが、私は未読です。
 ハーレクインのような劇的な恋愛話が多い中、本当に普通の人たちの、普通の恋愛を描いたこの作品は、なんだか「平凡だけど、そのままでいいんだよ」と言われているみたいで、ホッと出来ます。
 決してドラマチックな展開はないのですが、じわっと胸が温かくなります。
 美少女・智子の「うちはあんな 手ぇつなぐだけで にこにこするような 恋愛した事ないて 思たら悲しなった…」というセリフが、すごくいい感じ。
 独特の4コマ漫画(コマの進み方が慣れないうちは読みにくい。)なのですが、息抜きに読むのには最適の作品だと思います。
 
 


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